人間が日常生活でうける放射線の量は? |
実は、放射線は自然界にも存在します。X線を使った検査を受けていない人でも、普通に生活していれば大地や空気・宇宙などからの「自然放射線」で1年間に2mSv(ミリシーベルト)程度の被曝を受けています。なお、日本における放射線業務従事者に対しての基準は、年間50mSvを超えてはならない、と定められています。 |
放射線による障害はなぜおこるのか? |
生物が放射線を受けると、放射線の電離作用が働き、DNAが損傷を受けて細胞の再生や増殖の機能が正常に働かなくなることがあります。その程度は被曝した放射線量によって異なり、放射線の感受性はDNAの量に比例します。細胞分裂を繰り返す細胞(骨髄や皮膚の細胞など)は障害を受けやすく、分裂を行っていない分化した細胞(筋肉の細胞など)は影響をうけにくい、ということが言えます。DNAに傷をうけても、被曝量が少ない場合には自然に備わっている修復作用によって治ります。ただし、修復の途中でなんらかの理由により正常に治らなかった場合は、遺伝的な影響が発生することがあります。また、被曝量が多いと修復が追いつかず、その細胞は正常に分裂出来なくなって死んでしまい、組織や器官が正常に働かなくなったりします。 |
検査で用いられるX線の影響は? |
結論から言いますと、医療施設で行われるX線を用いた検査での被曝量はごくわずかですので、ご心配はいりません。200mSv程度の線量では臨床的に急性の障害は表れないといわれています。また、胎児の被曝による影響(流産、奇形、発育遅延など)は100
mSv以下の被曝では現れないことが知られています。検査では身体の一部分だけに限ってX線が照射されますので、影響はさらに少なくなります。
経過観察のための繰り返しの検査の場合は特に白血病やガンに対する不安を強く感じる方が多くいらっしゃいますが、1回の被曝量がわずかであり、かつ人間に備わった回復力がありますので大丈夫です。X線をあびるわずかなリスクと検査で得られる情報の重みとを考え合わせたとき、検査を行う価値の方が非常に高いので、全世界でX線を使用した検査が行われているのです。ただし、妊娠中や妊娠の可能性がある方の場合はご相談下さい。当クリニック放射線科は、できるかぎり少ない被曝量で検査が終了できるように注意・努力してまいります。
一般撮影(胸部)
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0.1mSv
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胃透視
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15mSv
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X線CT
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20mSv以下
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妊婦の胎児に対する影響がでるのはどれくらい? |
胎児の被曝による影響(流産、奇形、発育遅延など)100
mSv以下の被曝では現れないことが知られています。つまり、(妊娠週により若干異なりますが)妊婦が腹部に直接、一度に100mSvを越える量を被曝すると胎児に影響がでる、ということです。しかし、通常の検査ではそのような大量の被曝はありません。ただ、やはり念のため妊娠中や妊娠の可能性のある場合は緊急の場合を除いてX線を用いた検査は避けた方が良いでしょう。特に、受精後8週目位までの胎児は感受性の強いので注意しましょう。妊娠中や妊娠の可能性のある場合は検査を受ける前にご相談下さい。 |